自然資源だけでなく関わる全ての人たちの持続可能性の模索が必要
現在、日本の漁業は困窮に直面しています。地方の漁港の現場では、高齢化が進み、継承問題が深刻になっています。また、日本も含め周辺諸国によって乱獲が行われ、日本の漁師たちの網には魚が引っかからず、漁師たちは「魚が獲れない」ことを嘆いています。各地の漁協は衰退の結果として統廃合を繰り返し、中には漁港閉鎖を迫られる漁協も出てきています。 今まで日本は「魚の国」で、生産量は平成25年の時点で世界7位(※注1)、消費量はダントツトップでしたが、10年前からスーパーに並ぶ魚の面積は縮小し精肉に負けています(※注2)。こうして、並べればキリがないほど、獲る方も、食べる方も、衰退の一途を辿っている現状が見えてくるのが、今の日本の水産業です。
考えれば考えるほど、どこか一部分を改善するだけでは足りません。連鎖的に様々なアクターが変化を起こさなければ、水産業は変わりません。そのため、バリューチェーン全体で考えることが重要になり、漁獲の現場から家庭の食卓やレストランまで、一連の流れに関わる人たちが、同じ方向を向いて解決しようと取り組む必要があります。
自然資源としての水産物や海洋保全の持続可能性のみならず、漁業に関わる人、獲れた魚を購入し消費する人たち、一人一人にとって「サステナブルな(持続可能な)活動のあり方」を考えるために、2017年から始まったのが「OCEANチャレンジプログラム」です。テーマを絞った起業家プログラムで、持続可能な水産業を実現させようと取り組む起業家たちが集まり、それぞれの持ち場で変化を起こし、時に協働し、時に切磋琢磨するプログラムです。
今年前半に第1期を終了した中で、事業を通してこの課題に取り組もうとする若い起業家が、日本各地にたくさんいるということがわかりました。ですが、彼らは各地に散っており、近い分野で活動する他の起業家たちと出会う機会がありません。そのため、ノウハウや事例やネットワークも共有されておらず、孤軍奮闘しているのが現状でした。
私たちは、このプログラムで、同じ分野の、バリューチェーンの異なる位置にいる起業家たちが集まるようにデザインしています。このプログラムが目指しているのは、仲間を見つけ、お互いに協働を図り、知識・ネットワーク・アイデアの交換が行われ、それが実践され、成功し、拡がっていくことです。私たちのこの活動は、日本の水産業をシステム全体として持続可能に変えていくための、初めの一歩だと考えています。
※注1 FAO「Fishstat(Capture Production)」(日本以外の国)及び農林水産省「漁業・養殖業生産統計」(日本)
※注2 平成28年度 水産白書 第1部 平成28年度 水産の動向 第3節 我が国の水産物の需給・消費をめぐる動きより抜粋