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株式会社DRESSNESS
代表取締役 松井大輔

地元福井で感じた水産資源の減少。消費者側の意識変革で持続可能な水産業を目指す。

松井氏は、出身地である福井県の港で「小さい頃と違って、もう魚がとれなくなってきている」という言葉を聞き、水産資源の現状を目の当たりにする。ファッションやインテリアデザインを得意とし服飾品販売の店舗経営をしていたが、これがきっかけとなり、水産業になんらかの形で貢献できないか、と舵を切った。
そうして2年前、持続可能な漁業で獲られた水産物につけられるMSC認証と、責任ある養殖により生産された水産物につけられるASC認証をとった魚種を取り扱う、日本初の飲食店を地元福井県でオープンした。しかし、「持続可能な水産物」を利用した商品への認知度や需要がなかなか地元で浸透せず、経営状況に課題を感じる。翌年、店舗を閉め、東京への移転とリニューアルオープンを実行する。2017年5月には東京千歳烏山に「サステナブルシーフードレストランBLUE」を開店し、テレビや雑誌など、多数のメディアに取り上げられている。
松井氏は自分のレストランの経営だけにのみならず、持続可能な水産業の認知度向上に寄与したいと考えている。そのために、より多くの他の飲食店に持続可能な水産物を取り扱うノウハウやアドバイスを行うコンサルティング事業や、MSC認証やASC認証にとどまらない持続可能な調達方法を開発していく。さらにロジスティックスや認知度向上のために大企業との連携も図っていく。

>> シーフードレストランBLUE
>> 日本初!サステナブル・シーフードをコンセプトにしたレストラン店長松井さんの挑戦(動画)

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有限会社宇和島屋
代表取締役 三浦清貴

漁協など従事者全体の持続可能性のため、未利用魚を活用したじゃこ天新製品の販路を開拓する。

三浦氏は出身地・愛媛県の宇和島を拠点に、地魚を原料とした練りもの「じゃこ天」の加工・販売業を営む。
2017年、宇和島の漁港は閉鎖に追い込まれる寸前となるなど、地元の水産業の衰退は深刻である。乱獲の影響を強く受け、獲れる魚の大きさは日に日に小さくなっていく。漁師たちは網目を小さくし続け、獲っても獲っても儲からない悪循環が続く。そんな状況を見守り続けた三浦氏は、地元漁師たちの生活を少しでも改善させ、持続可能な漁師生活、持続可能な漁協のあり方を模索する。
三浦氏ができるのは自分のビジネスの中で、少しでも漁師たちの魚を買い取ることである。普通は水揚げされずに捨てられてしまう魚を買取り、それを活用する新たな練りもの商品を開発。日によって配合成分が異なることから「天の配合」であるという。だが、日々変わる成分配合の商品は、一般流通に乗りにくいという難しさを持つ。三浦氏は、学校給食などの流通を確保することで、その難しさに挑戦している。
三浦氏の野望は大きく、持続可能な漁師生活を復活させることである。地域の水産業関係者だけでなく、全国の事例や試みと繋げ、様々なステイクホルダーを巻き込み動きだすことを目指している。

>>宇和島屋

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株式会社食一
代表取締役 田中淳士

持続可能な資源がある未利用魚を高付加価値で飲食店へ。今後は自社の船と飲食店経営を目指す。

田中氏は、現在拠点を京都に置き、事業立ち上げから9年を経過する株式会社食一の代表である。食一は、せっかく水揚げされても、知名度が低かったり見た目が変わっていたりすることが理由で、市場で値段がつかない未利用魚を活用する。通常これらの魚は沖合や漁港で廃棄されており、海の汚染問題にも繋がっている。
こうした廃棄される魚を新鮮なうちに捉えるため、田中氏は全国数百箇所を超える漁港や漁協を巡り、漁師たちと強いコネクションを確立している。また、飲食店側に魚種の珍しさや地域独自の調理法を付加価値として伝え、メニュー内容に応じてきめ細かにカスタマイズした卸しをすることで、飲食店側からも喜ばれる。こうして未利用魚の正当な価格付けを可能にし、漁協や水産業従事者が持続可能に事業を続けられる仕組みを作り上げてきた。現在、関西を中心とするグルメ寿司チェーンや居酒屋などに販路を拡大してきている。
今回のプログラム参加により、WWFジャパンの協力のもと、絶滅のおそれのある生物種のリスト「レッドリスト」をもとに、獲る魚種のバランスを見ながら事業展開をしていく。
田中氏の次の目標は、持続可能な漁師の職業を守るため、自社の漁船を持つこと、そして、自社所有の飲食店経営へと、多角展開することである。そのためには、現在の商品ラインのブランド確立と、認知度の向上、販路の更なる拡大を目指す。

>>株式会社食一

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早稲田大学商学部 葦苅 晟矢

食糧問題解決の視点から水産業へ。栄養豊富なコオロギの飼料化で経営難の養殖生産者を救う。

葦苅氏は、 高校時代から食の廃棄に疑問を抱き、食糧問題に自分で何かできないかと考えてきた。その結果、コオロギの食用化のアイデアにたどり着き、自宅でコオロギを飼育しながら実用化に向けて試行錯誤を重ねていた。
そのおり、近年多くの水産養殖の生産者が厳しい経営難に陥っていることを知る。エサの主原料である小魚の漁獲量が減っているからだ。葦苅氏はそもそも「魚を、魚で育てる」ということに疑問を抱き、さらには、養殖業者の飼料高騰問題を解決できるのではないか、と考えた。そこで葦苅氏は、より持続可能に生産ができ、タンパク質を豊富に含み栄養源としても優れており、人工繁殖が容易なコオロギを原料にしたエサの開発に邁進する。
ただ、養殖生産者の中にはコオロギをエサとして与えることに抵抗がある人も少なくない。今後の販路やニーズの調査のために、葦苅氏はコオロギのエサや新たなエサの活用について、生産者の聞き取り調査を行っている。
そんな葦苅氏が見ている世界は、持続可能な水産業をつくることで見えてくる食糧問題のない世界だ。近い目標は、まずは養殖用のエサ市場の1%をコオロギに補っていくこと。葦苅氏は事業案に賛同し、繁殖に必要な機器や工場設立などの初期投資が必要となるため、共同開発に興味のある様々な人たちと繋がっていきたいと考えている。

>>水産起業家が養殖餌をコオロギに転換するなど事業案発表(2017/4/27, サステナブルブランズジャパン)
>>授業で身に付いた行動力 ビジネスコンテスト世界大会に出場(2016/5/26, 早稲田大学)